トヨタ博物館富士モータースポーツミュージアム 本修復作業の実施にあたっては、新規仕入先の外装板金塗装を担当した職人の果たした役割が極めて大きいことを特記しておきたい。同社にとって博物館収蔵車両の修復は初の試みであったが、一般的な補修作業の範疇にとどまらず、「展示資料としての完成度」を強く意識した取り組みがなされた。具体的には、当館の常設展示車両の仕上がり状態を把握するため、複数回にわたり展示会場に足を運び、既存収蔵車両の塗装肌、光沢感、質感等を実地に観察したうえで、本車両の仕上げ水準の設定が行われた。とりわけ未塗装樹脂部品の白化対策においては、材料特性に応じた塗料選定および試験塗装が繰り返し実施され、単なる外観回復にとどまらず、製造当初の質感再現を目標とした検討が重ねられた。その結果、新品時に近い均質な外観を取り戻すに至っている。 これら一連の作業は、機能回復を主眼とする一般整備とは一線を画し、むしろ工業製品の保存修復における「再現技術」の実践例と位置付けることができる。職人自身も本作業を自己の「作品」として捉えており、その過程が技術的研鑽の機会となった旨の言葉が聞かれた点も大変印象的であった。 近年、自動車整備・板金塗装分野においては、技術者不足や工賃の上昇といった課題が顕在化している。そのような状況下において、本件のように高い専門性と責任感をもって資料修復に取り組む技術者の存在は、博物館活動を支える上で不可欠である。本修復作業は、単に一台の車両の外観を回復するにとどまらず、現代における工業技術者の技能と姿勢をも記録する機会となった。ここに、一連の補修作業にご尽力いただいた藤井自動車の皆様に対し深い謝意と敬意を表するものである。 今回の全塗装補修作業は、当館の収蔵車両に開館当初より深く関わっていただいている仕入先の負荷高騰の影響もあり、今後の修復作業への考慮から新規仕入先の開拓を強く意識した判断であることを付加しておきたい。各仕入先にはそれぞれの得意分野(車両年式、製造メーカー、車体や機関構造など)を最大限活用していただけるよう熟慮しつつ、今後とも良好な関係を築いていきたいと切に願うものである。■協力会社 藤井自動車(有限会社 GARAGE FUJII)636謝辞および技術的所見7おわりに
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