トヨタ博物館富士モータースポーツミュージアム• フルレストアではなく主に外観中心に修復を行う。• オリジナル性の維持を最優先する。(今回の主作業:外装再塗装)• ボディ各部の損傷状況と対応凹み補修(板金作業あり)• 天井中央部付近に打痕による凹み• 右フェンダー前部に凹み複数箇所あり 当該車両は、入手時点においてエンジン、駆動系ともに良好な作動状態を維持していた。また、室内についても革巻きステアリングの一部破れや、革巻きシフトレバーの破れ、後部シートの退色を除いて著しい損耗や汚損は認められず、外観塗装面の経年劣化状況は年数相応であったが、全体としては比較的良好な個体と判断された。しかしながら、外装部品の分解作業を進める過程において、車体各部の内部空間—具体的にはバンパー裏側、フェンダー内側、サイドシル内部周辺、灯火類取付部周辺などに、微細な砂粒および泥状堆積物が広範囲にわたり確認された。これらは単なる路面由来の付着物の範囲を超え、奥まった閉鎖空間にまで入り込んでおり、通常使用環境下では蓄積しにくい状態であった。そのため、各部品の脱着に伴い、想定以上に清掃・洗浄作業を要し、作業工程および工数に影響を及ぼした。特に、樹脂部品の裏面やスポット溶接部周辺など、洗浄が困難な部位にまで堆積が認められた点は特筆される。 これらの堆積状況から、本個体の過去使用環境についていくつかの可能性が考えられる。第一に、一時的な冠水環境(いわゆる水没に準じる状況)への曝露である。この場合、水の流入とともに細粒の土砂が車体内部に侵入し、その後乾燥・残留した可能性がある。第二に、未舗装路あるいは土木作業環境等における継続的使用である。長期間にわたり粉塵や泥濘環境に曝された場合、走行風や振動により微粒子が徐々に内部へ侵入・堆積することが考えられる。ただし、前述のとおり機関系統に顕著な異常が認められない点、ならびに室内の保存状態が比較的良好である点から、長期間の完全水没車両であった可能性は低いと推定される。一方で、短時間の浸水または高濃度粉塵環境下での使用歴については否定できない。 以上のように、本個体は外観および機関状態からは把握し得ない使用履歴の痕跡を有しており、分解調査によって初めて顕在化した事例である。このような痕跡は、筆者がこれまで対応してきた車両修復において経験したことはなかった。なお、本修復作業においては、これら堆積物を可能な限り除去した上で板金補修作業と外装再塗装を実施し、展示資料としての外観品質の回復を図った。• フロントバンパー取り外し後の内部状況。構造部材の奥部にまで泥状堆積物が確認される。58写真8 バンパー取外し状態写真6 車体前面写真7 右フロントフェンダー写真9 砂泥堆積状況3修復方針4実施作業概要
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